ある朝、ゆうはたった一つ残ったゆずの実をとりに、丘にのぼりました。ゆず餅をたべたいという弟にせがまれたからです。
木は大きく枝を広げていました。下から見るとどの枝についているのかわかりません。ゆうは着物のすそをからげて木にのぼりました。太い枝にからだをあずけながら、そろそろと実のついた枝に手をのばしました。
その時、左手にもった枝が急にたわみ、右の枝がいきなりゆうの顔にピシリとあたりました。枝にはトゲがありました。ゆうの目から血がにじんできました。
家にかえり布で目を冷やしましたが、いたみはますます大きくなるばかりです。いく日か経つと、熱やいたみはとれましたが、左の目はとうとう見えなくなりました。
村の人たちは、ゆずの木のために目をいためた娘をあわれに思い、丘の上のゆずの木を切りたおしました。それからは、この村ではどの家でも、ゆずの木は一本も植えることはしなくなりました。