名主の家の老婆は、温かい粥(かゆ)でもてなし、番頭は腹を満たしてうとうとし始めたので、老婆は布団を用意してくれて、いつしか眠りについたころ、ふと不思議な物音に目を覚ました。
番頭が老婆の部屋をそっと覗くと、老婆は誰かを呪うような祈りをしていたんだ。
その顔はまるで般若(はんにゃ)のような形相になって呪文を唱えていたんだと。そして一片の小袖を取り出し、焼け火箸(ひばし)をあてて古着商の主人を呪っていたんだ。
そのことに気づいた番頭は、腰を抜かしそうになりながらも、そっと名主の家を抜け出て、大急ぎで江戸に戻ったんだが、主人はもう発狂していて、話すこともできなかった。
そして間もなく狂い死にしたそうだ。
因果応報(いんがおうほう)で、当然の報いを受けたってことだな。
悪いことはするもんじゃねぇぞ。