季節が変わって 、その牧場に徳川将軍家が鷹狩りにくることになっただよ。
滅多にあることじゃねえから新平も検分に精を出しただろうよ。
あの日と同じこんぶくろ池を見渡せる木立の陰で、水を飲みに来る馬を見張っていた時のこんだ。
池向こうの森の中に、また、あの若い娘っ子がおっただよ。
もう娘っ子には会えねえと諦めかけていた新平は、さぞかしびっくらしたんだんべ、「あ、あの時の!」と、いかい声を出して娘っ子の方さ駆け寄ろうとしただよ。
水を飲んでいた馬が驚いて森の中に逃げ込むが早いか、娘はなんと池の中に飛び込んでしまったんだと。
あわてた新平は池の中を見たが、静まりけえった池には悲しそうな新平の顔が映るだけだ。
そのうちに池の中の水がゆーらゆら動いたと思ったらよ、池の中から赤い舌をチロチロ出した大蛇があらわれたんだと。
新平は腰を抜かすほどたまげてよ、大急ぎで馬に乗って代官所に帰った、てえ話しだ。
あの池にはこめら(こどもたち)だけでいくもんじゃねえ。大蛇に食われちまうからな。