ちょうど魚が3匹ばかし釣れたころ、川向こうの田んぼをなんの気なしにひょいと見たら、えらいこった。カッパ小僧と目が合ってしまっただと。
カッパ小僧はなりは小さくてもよ、人だけじゃねぇ、いかい(大きい)馬でも簡単に水ん中引きずり込むんだ。つかまったら、もうさいごよ。そのカッパ小僧が田んぼのクロ(畔)んところに手を着いて、こっちをじぃーっと見てんだから、そりゃえらいこった。
木びきの爺さまは、一目散に逃げたい気持ちをおさえて、カッパ小僧をにらみながら一本ずつ釣り竿を上げながら、あとずさりしただ。
そんで、カッパ小僧のやつがひょいとわき見をしたすきに、ほれ、今だ!とばかりに釣り竿かかえて走って逃げたんだと。
あわてて家にけぇった木びきの爺さまは、気がついた。釣った魚を入れたビクを置いてきてしまったんだな。とはいえ、日も暮れてきて暗くなると、もうあの場所には戻れねぇ。