隣のじいさんは、この辺きっての鉄砲うちの名人でした。そんな腕ききのじいさんも、未だかって一度も、この庭で遊ぶ雉子をうてたことがありません。
きょうも、おばあさんに、お茶を入れてもらっても、飲むようすもなく鉄砲をかまえています。でも、雉子とにわとり、にわとりと雉子、背中にのったり、えさを取り合ったり。まるで同じ仲間同士の親子のようにみえます。
引き金を引こうとすると、手がふるえてしまいます。ふるえたというよりどうしても、手元が、ゆるんでしまうのです。
「やっぱりだめだ。」
「あの姿を見ちゃあ、うてねえなあ。」
じいさんは、かたわらの畑の菜っぱを抜いては、にわとりや雉子に食べさせてやりました。
「まったく、かわいいもんだ。これじゃ、おれもまんまにならねえ。仕事がえでもすっか。」
といって、腰を上げました。
鎮守(ちんじゅ)の森に、まっかな夕日が沈みかけると、雉子たちは、またつれだって、ねぐらに帰っていきました。