空は明るくなって陽がさしはじめました。ぬれ色の木や草も踊っているようです。けものたちも高い笑い声をまきちらしています。小鳥たちの合奏も始まりました。
「たしかになにかが通っていった。」
「そりゃ、悪魔だんべ。」
「そんなこたあねえ、福の神だ。」
「たしかに足を見た。まるで山が落ちてきたみてえだった。」
「目をあけてそっと見たら、たしかに東の方へいったど。」
こんな話が、どこへ行っても聞かれました。
「それは、でいだらぼっちって、いうだとさ。」
村の長老はゆっくりといいました。 誰が、どこで、誰に聞いてきたのかそれはいいませんでした。
「富士山のふもとの人たちも見てるって。」
「何でも、筑波下(つくばした)の人たちも見たって。」
でいだらぼっちは、きっと富士山をまたぎ、関東平野を横切って、筑波山の方へ歩いて行ったのかも知れません。
逆井(さかさい)の足跡も、酒井根(さかいね)や高田(たかだ)の足跡も、みんなその時のものかな。